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鞄を持った俺は、美紗さんと共に家を出て通学路を歩く。
彼女は俺の腕を嬉しそうに組んでいた。
恋人がいなかった俺にとって、正直物凄く恥ずかしい。
「あの、美紗さん……?」
「何?」
「……歩きづらいんですけど」
「我慢して」
「あっ、はい」
やはり離れるつもりはないようだ。
こんなところを知り合いにでも見られたりしたら、どうしよう……?
などと考えていると、交差点に差しかかったところで美紗さんは名残惜しそうに腕を離してくれた。
そして交差点の一本を指差し、悲しげに呟く。
「私、大学はあっちだから。ここでお別れだよ」
「そ、そうなんだ……」
「会えないの、寂しいね」
「いや、まあ……うん」
本当はホッと安堵しているのだが、そんな顔を見せる訳にはいかない。
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