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「それじゃ、またね」
美紗さんはそう言うと、小さく手を振りながら歩いて行った。
……ちょっと可愛いと思ったのは秘密だ。
何はともあれ、危険は去った。
「さて、行くか……」
それからいつも通り、しばらく一人で歩いていると――
「市原君、おはよう」
不意に後ろから声をかけられた。
振り向くと、そこには腰まで長くした茶髪に緑の双眸、黄色のリボンを着けた女の子が立っていた。
彼女の名前は、糸城水桜。
俺のクラスメイトなのだが、彼女は知る人ぞ知る日本有数の名家『糸城家』の一人娘である。
しかしそれを鼻にかけぬ優しさと明るさを持つ、とても可愛い美少女だ。
「あっ……おはよう、糸城さん」
「今日も早いね。良かったら、一緒に教室まで行っていいかな?」
「ああ、いいよ」
特に断る理由もない。
俺が頷くと、糸城さんは「ありがとう」と礼を言って俺の隣に並んだ。
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