0人が本棚に入れています
本棚に追加
これは、深い深い海のお話、
とてもさみしい人魚のお話
ここは、人魚の住む町で・・・
決して人が入れない海の底で、
一人、嘆き悲しむ美しい人魚がいた。
私は、その人をお母さんと呼んだ。
とうして、お母さんが泣いているのかわからず
体を動かし、声を出して訴える、
「・・・・・・・・」
その人は、何も答えなかった。
ただ、ずっと、泣いていた。
すると何かを決心したかのような顔になり
私は、その人の手を離れた。
私は、その人に放り出されたのだ。
暗い暗い海の底へ、
そして私は、捨て子になった。
古い、深い、廃墟と化した人魚の町に
私は捨てられた。
私のお母さんは、離れる瞬間、
「ごめんね」と、
一言つぶやいて泣いていた。
その時の私は、とても小さかった。
言葉も、うまくしゃべれないし、理解もできない。
だから、お母さんの言うことも、
したことも理解できなかった。
そして私は、誰もいない深い廃墟の町へ落された。
私は、ずっと泣き叫んだ!
いつかお母さんが帰ってくると信じて、
わからない、さみしい、あまえたい、
おなかがすく、かえってきて、だいすきだよ、
・・・おかあさん・・・
頭の中で、ずっと、そんな思いが空回りして
ぐるぐると同じ思考が頭の中を回る、
そして、生きる希望も勇気も泣く力さえも
すべて・・・無くなった。
帰って来て欲しいだけなのに、もう何もいらないのに、
私は初めて、お母さんに、裏切られた!
死ぬ直前なのに、そんなことを思った。
訴えることも、泣くことも、動くことも、できない。
ああ・・・もうすぐ死ぬんだ・・・
一瞬で目の前が真っ白になった、
目の前にある景色をまるで
白いペンキで塗りつぶしたように
目の前は真っ白だった。
最初のコメントを投稿しよう!