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「そう信じてる奴らは、hollyhock・hillを学園側がどこかの企業に秘密裡に作らせた超高性能な学習用ソフトなんじゃないかって、疑ってるみたいだな」
内容が内容なだけに、世論を気にして世間には公表せず、何も知らない生徒をテストプレイに使ってデータを取っているのだろう──と、そんなふうに。
それにここは、陸の孤島みたいな僻地にある全寮制学園だからな。
いまどき、生徒はみんな外部との連絡にはみんなゲートを使うから、その気になればやばい情報は事前に学園側が握り潰すなりごまかすなりも出来るはずだ。
これが真実なら、なおさらに。
まだ、なんの証拠もない噂レベルの話だけどな、と遊馬は言った。
「──だから、噂の肯定派は言うのさ。その地理的条件ゆえに、この葵陵が試験場に選ばれたんだと」
「…………」
もはや俺は、二の句も接げなかったね。
いくらなんでも突拍子がなさすぎる。
もし本当に、学園側がそんなことに関与してるなら、ことが大掛かりすぎるし、なにより、リスキーすぎるだろう。
もしそれが本当なら、学園が生徒をモルモットにしてる、ってふうにも受け取れるじゃねぇか。
倫理も人権もへったくれもねぇ。こんな噂があるってだけで、学園の信用問題にもなりかねない。世間にバレたらとんでもない大騒ぎになるぞ。
そんなことになったら、ことは葵陵だけには収まるまい。現行のバーチャルネットやアナザーゲートシステムそのものを揺るがしかねない騒動にまで、事態は発展するだろう……。
「……確かめたやつは?」
「『居る』とも『居ない』とも言えるな。でも、どちらも確たる証拠は出せなかった」
まぁ当然だろう。
所詮、高校生だそんな未知の理論やシステムをアッサリ説き明かすやつがいたとしたら、そいつは天才だ。
それに信憑性がない現段階において、世間が確かなソースもないまま、そんな与太話に耳を貸すこともあるまい。
ゴシップ記者でも鼻で笑うぜ。
「でも、違うという確証もない──って肯定派は言うぜ?」
そんなのは悪魔の証明ってやつさ。ない、ということを完璧に証明するのは存外難しい。
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