1・hollyhock・hillってなんぞ?

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「なぁ、遊馬?……お前の言う肯定派ってのはゲームで得たアビリティやパラメータが、現実世界でもなんらかの影響を及ぼすと思ってる奴ら、なんだよな?」 得たり、と遊馬は目を細めて笑った。くそ、やっぱ俺が自力で気づくか、試してやがったな。 「だが、今回の噂は真逆だ。校内施設を利用した結果がゲームに反映される。──これも?」 遊馬はまだ答えない。 ただニヤニヤと笑うだけだ。チェシャ猫じみた、人を食ったような笑みを。 最後まで言わせたいらしい。 「……つまり、現実で勉強したり運動した成果がゲームにも活かされ、実生活でも形になって現れたって、それだけのことだろう?」 ……バカバカしい。 種も仕掛けも最初からあったもんじゃない。そんなものは当然の結果だ。 一気に力が抜けたぞ。なんなんだよ、散々脅しやがって! そうなるとレア・アビリティ云々ってのも俄然、信憑性が薄れてくるな。 うさんくせぇ。 「と、思うよなー?」 「……違うのかよ」 「まぁ、半分は合ってるよ。ワトソン君?」 むっかつく。 遊馬は俺の半眼を無視したまま、きっと本家の名探偵が助手にそうしたように、嬉しくてしょうがない、という態度で喜々として説明役を再開した。 「確かに前半の施設利用におけるパラメータボーナスとリアルでの影響は偶然、そう勘違いしただけの可能性が高いよな。たまたまそのときレベルアップして、そのとき入ったパラメータの数値がよかったのかもしれない。現実だって、そのときたまたま本人の、日頃の努力が実を結んだのを勘違いしただけかもしれない。……あるいは言い出したのは本人でなく、その成功を嫉んだ人間かもな。わざと、そんな噂を流したのかもしれない」 『あいつが最近調子がいいのはゲームのシステムを上手く利用したからだ!』 ──そんなふうに。 「……自分の努力や才能の不足を認めるより、相手が自分の知らないズルをしてるのだと思ったほうが精神衛生上、いいもんな?」 遊馬は皮肉たっぷりな口ぶりでそう言って笑った。 「まぁ、でも否定に足る証拠もまだ出ていないから、可能性はゼロじゃないかもしれないけど」 それを信じていないのが、ありありとわかるな。まぁ、気持ちはわかるが……。
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