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「なるほど、噂の前半はデマの可能性が高いってことはわかった。──なら、肝心の後半は?」
そう俺が問い掛けると、遊馬はすっと笑みを引っ込めてから確かに一度頷いて、
「ああ、デマじゃなかったんだ。……こないだ、出ちまったんだよ。ついにその決定的証拠ってやつがな」
ひどく面白くなさそうに、そう言った。
……なるほどな。
ようやく全部繋がった。
思い出すのは朝、先輩が浮かべてたどこか辛そうな表情と、一冊だけいつも予約がいっぱいだったあのシリーズものの真ん中の本の表紙。
あれが、その証拠。
あの本は読まれるために借りられてたんじゃない。
ただ、借りた、というデータを作るためだけに利用者の手から手に渡り続けていたのだ。
たぶん、ずっと。
今朝のあいつも。
もや、と嫌な感情が胸に沸いたのが自分でもわかった。
順番、譲らなくて良かった。
狭量かもしれないがそう思えた。
なにがhollyhock・hillだ。
英語にすりゃ決まるとでも思ってんのかアホめ。
レア・アビリティだと?
んなもん、くそっくらえだ。ばかやろう。
いっそサーバーごと落ちちまえ。
「まぁまぁ。でも、そこまでしたとしても、必ずしもそのレア・アビリティが利用者に与えられるとは限らないんだよ」
「なんか条件でもあんのか?」
「わからん。ランダムかもしれないし、ジョブとの相性があるのかも。……なにしろ確率がとんでもなく低いらしいからな」
むしろ手に入れたやつなんか、いなければよかったのに。
先輩の憂い顔を思い出してそう思う。
「……そんな面倒な手間をかけてまで手に入れたいほどの、貴重なモンなわけ?」
「どうだろな?」
これまた、まったく興味のなさそうな顔で遊馬は肩を竦めた。
「俺はアレには興味ないけど、欲しがるやつはなにしても欲しがるだろうな」
そんなもんかね。
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