1・hollyhock・hillってなんぞ?

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「ただ、いまアレを欲しがってるやつはかなり多いよ?なんか、アレがあると今回のイベント、かなり楽になるって噂だし」 ……イベント、ね。 「それにしても噂、噂ってそればっかだな」 「……まぁ、公式からのヘルプやガイダンスが一切ないようなゲームだからなー。情報収集しようとしたら、噂に頼るしかないのよ」 挙げ句、その噂に躍らされて、この騒ぎか。 「……仕方ないさ。 いままで、どうやったら手に入るのかさえわからなかった貴重品が、少しの手間で手に入るかもしれないんだ。 それがなんであれ、試してみたくなるのがヒトのサガってやつだろ?」 しばらく、あの本の予約表から人の名前が途切れることはないだろうな、と遊馬はそれが決定事項であるかのように淡々と、そんな忌ま忌ましいことをのたまいやがった。 それに、まるで被せるみたいなタイミングで空々しいチャイムが鳴る。 やけに長く感じられた昼休みが、ようやく終わったのだ。 なんてこったい。 俺……メロンパン、半分しか食えなかったじゃねーか。 教室に戻る道すがら、強引に詰め込んだメロンパンはそのあとの授業の間も、しばらくは俺の胃をもたれさせた。 サクサクのクッキー生地も、中のバターたっぷりのふんわり生地も、普段ならゆっくり堪能できたってのに……。 おのれ、hollyhock・hill。 昼まで知りもしなかったたかがオンゲーに、俺のヘイト値はすでに振り切れそうな勢いだ。 だというのに。 あんにゃろう。 あんなこと言いやがって……。 授業中だというのに、サインフレームの脇にメールランプが点滅し、開けてみると当のあんにゃろうからだった。 『確かにオレの言い方は悪かったかもしんないけどさ。……でも、一度くらいはやってみても損はないと思うぞ?』 教室に戻る前にも、同じようなことを言われた。 『お前さ、やっぱあのゲームをもっとよく知ったほうがいいよ。この学園で穏便に生活したいなら、さ』 そのためには、自分で体験するのが一番だ、と遊馬は言うのだ。 ……心配、してくれてるんだろうな、とは思う。 確かに噂だけで物事を理解した気になるのはよくない。 百聞は一見にしかず。 昔のひとはいいこと言った。 ……でも、どうしても気が乗らないんだよなぁ。 『放課後まで考えさせてくれ』 そう返信したのが、いま俺にできる精一杯の譲歩だった。
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