2・第一印象って大事だよな

3/15
前へ
/78ページ
次へ
「……気に入らない、だから関わらない、なんて何だかビビッて逃げてるだけみたいじゃないか」 シンプルに言うなら、たぶん動機はそれに尽きた。 「……へー?」 負けず嫌いだったんだなお前、と遊馬に嫌味のない感じで笑われ、妙に居心地が悪い。 「や。別に……そんなんじゃねぇよ。やったこともないのに批判だけするとか、そんな情けないことしたくないだけだ」 「ハイハイ、ツンデレ頂きましたー。うわやだな、オレずっとお前は攻めだと思ってんのに、ついうっかり可愛いとか思っちゃったじゃない」 そのカマボコ目、やめんか。 「コウキ受かー、考えたことなかったな」 「考えんでいいむしろ考えんな」 「ざんねーん、もう萌えちゃったもんね?でも、そうなると相手がなー。先輩は受けっぽいし、あとお前に接点ある、萌える攻めっていたっけ?」 「……おい遊馬、手がまた止まってる」 「あ、ワリ」 すぐさま作業に戻った遊馬は、ひのふのみ、と口に出して手にした書類を素早くチェック。 無論、俺もその間、自分の作業の手は止めてない。……でないと終業時間までに終わらないからな。 不愉快な妄想への仕置きはあとでだ。戦力を減らす愚を冒してたまるか。 ただ、忘れんぞ腐男子め。 誰が受けだ何が萌えだ。野郎になんぞ組み敷かれてたまるか。 だから作業しながらも時折、ぐふっと不吉な笑いを漏らす変態がいま、なにを考えてるかは考えないことにする。 考えてたまるか。 ただ淡々と、二人で未整理の資料を分類分けし、ファイリングしていく。 ……まったく、このすべてがバーチャルネットに対応した学園で、この徹底したアナログっぷりったらないね。 ここでは金銭が関わる書類も取り扱ってるから、不正な改竄可能がよりしやすいデジタルより、証拠として残りやすいアナログで残したいのはわかるんだが。 しかもこの場所自体、特定のIDを提示した生徒にしか入室できない徹底ぶりだ。 ……そのことも、俺が放課後まで先の返答を先延ばしにした理由のひとつだったが。 この時間、この場所には滅多な人間は近づかないとわかっていたから。 いまここでなら、人目を気にせずhollyhock・hillの話題を出せるだろうと踏んでいたんだ。 葵陵学園生徒会、分室。 この場所には、教師を除けば生徒会メンバーと生徒会執行部の生徒しか立ち入ることを許されない。 俺と遊馬は一年のときから、その執行部に籍を置いていた。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加