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前方にスライムと戦う琉亜の姿が見えた。
「る、琉亜ー!」
私は大声で琉亜の名前を叫ぶ。
「えっ、乙葉?何で」
琉亜は驚いた様子だったがすぐに真剣な顔つきに戻った。
「炎はどうしたの?早く戻って」
大声で怒鳴られた。
「私は……琉亜が…心配で」
耐えられずに涙が流れてしまった。
泣いている私を見て琉亜はため息をついた。
「怒鳴ってごめん。でもね、乙葉の為なのよ」
琉亜は私の肩を掴んでじっと私を見つめながら言う。
「……私、何が起きてるのか分かんない」
「……じゃあ、見てて。私がこれからする事を」
そう言うと琉亜は私に背を向けた。
琉亜の見つめる先にはあのスライムがいた。
「……琉亜…」
スライムはみるみるうちにデカくなって琉亜に襲いかかって来た。
それを琉亜は避ける。
スライムは再び琉亜に襲いかかる。
でも琉亜は動こうとはしなかった。
「る、琉亜逃げて!」
そう叫んだが既に遅かった。
そんな……琉亜…死んじゃったの?
大丈夫って言ったのに……嘘つき。
その時、スライムに異変が起こった。
スライムがバラバラに吹き飛んでいったのだ。
突然の事に私はただその場でじっとしていた。
「…乙葉、もう大丈夫」
琉亜は私の方を向いて微笑んだ。
良かった……いつもの琉亜に戻った。
「やっぱり居やがったか」
炎の声がして振り返ると不機嫌丸出しの炎が立っていた。
「あ、あの、ごめん!」
炎君に守って貰ったのに勝手に琉亜の所に来ちゃったし。
「やっぱり乙葉は私が好きなんだよね」
琉亜はそう言ってほっぺをつまんだ。
「ったく。早く行くぞ」
炎はポケットに手を突っ込んでいた。
でも私の中にある疑問が生じた。
「行くってどこに?」
「あー、ごちゃごちゃうるせえな」
炎は両手で耳を塞ぐフリをした。
ひどいッ!
「あのね、いきなり喧嘩は止めてよね」
うんざりしたように琉亜が言う。
「喧嘩なんてしてねぇよ」
「はいはい。行けば分かるからついて来て」
琉亜は私の手を引いて歩き出した。
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