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「成実、貴方は私と一緒に信玄公と謙信公のお相手を。綱元、貴方は背後に控えるくのいちの相手をなさい」
「はいよ!」
「承知」
返答と共に最初に動いたのは、綱元と呼ばれた男だった。踏み込みと共に逆手で抜刀、一息でかすがとの距離を縮める。
「お相手願いますよ、くのいち殿」
息を飲むかすがに、綱元は刀を振り下ろした。かろうじてくないで受け止めたかすがは、軽い身体を後ろに吹っ飛ばす。
「! かすがっ」
「謙信公、目の前のことに集中なされよ」
かすがを振り返る謙信の意識を戻すように、珱は鉄扇をばんっ、と音を立てて開いた。
「女とてなめなさるな。私はかの竜の片割れ。片割れもまた、竜でござりますれば」
「おっと! 俺の存在も忘れてもらっちゃあ困んぜ」
成実が割り込むように宣言した。
「伊達三傑が一人、伊達双璧が一角、『武』の成実たぁ俺のことだ!」
「んでもって、兄様の忠犬ね」
ぽそりと呟かれた珱の言葉に、成実は照れたように笑う。どう考えても、馬鹿にしかされてないが。
「ま、それはともかく。そういうわけですよ。お相手願います」
「……小娘が」
「いたしかたありませんね。おあいてしましょう、りゅうのひめよ」
武器を構え直す信玄と謙信に、珱は笑みを深めて高らかに告げた。
「『戦武竜姫』珱――さぁ、来ませい!」
続く…
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