手離し難き運命

4/10
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
いつもより一際近くに有るように感じるそれは、私の気分を十分に盛り上げてくれた。 「……あら。」 その一方で、その神秘的な微光を背に受けた人影一つ。 私が雇った門番は、門番の癖に、何に気を配るでもなく御安眠なさっている。 わざわざ椅子まで用意して、あいつ何で寝てんのよ。 朱色の長い髪に特徴的な服装の、紅美鈴。 彼女は此所のもう一人の従者。 雇った者は他にも沢山居るが、特別な役職を与えたのは、咲夜と彼女だけだ。 因みに特徴的というのは……、まあ言えばあのチャイナ服の事だ。 此方が指定したものでは無いので、あれは彼女の私服で私物だ。 確かに服装は個人の好みの範囲、私に兎や角言う権利はない。 しかし彼女の職務怠慢については、文句せずにはいられないわね。 そんな私の心情など当然知らずに、美鈴はただただ惰眠を貪っている。 あ、椅子から落ちそうになってやんの、ふふ。 ……気持ち良さそうに寝ちゃって。 「……ふん。」 如何にも外敵など居ないと体現するように、安心しきった美鈴を横目に、私は寝室を後にした。 ――――――――――――――――――― 血のように紅い絨毯が敷かれた、長い長い廊下。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!