手離し難き運命

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咲夜の淹れた、一日の始まりの一杯が最高なのよ。 さてさて、今日の夕食は何かしら――。 「――あら。」 誰も……いないわ。 辺りを見回すが、食事をしてる者などもっての他、仕度をしている妖精メイドも、当然それを指示する咲夜の姿もない。 この時間帯は普段なら此処に誰も居ないという事は殆ど無いのだが、今日は珍しく閑散としていた。 鼻をくすぐるような紅茶の香りも、心を踊らせるような夕食の香りも、漂っては来ない。 私が起きる時間には仕度を終えている筈なのに、今日は何もかもが遅い。 「……どうしたのよ、本当に。」 ついつい独り言が零れてしまう。 そうしても、何も変わらない事は分かっているのに。 あー、もう! この憤りを何処にぶつければいいのかしら。 ――――――――――――――――――― 「ちょっと、美鈴!」 びくっと大きく震えてから、美鈴は恐る恐る私の方に振り向いた。 直前まで寝ていた所為だろう、美鈴の目は少し虚ろだった。 結局のところ、私の八つ当たりを受けるのは彼女となった。 もっとも、私も理不尽な怒りをぶち撒ける気はさらさら無い。 正当な内容のものを、正当な形でだ。
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