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世界的なガンプラブームとアイドルブームが共存しているのは希有な現象であるが、それは765プロとしても幸いな事だ。
ガンプラ・アルティメイトの優勝で更なるファン層の開拓に成功したのもあって、あずさと冬夜は今、海外講演を行っている。
春香はその分事務所が寂しくなったかのように思ったが、実際はそうでもなかった。
後輩をスカウトしてくる、と社長の高木順一朗が張り切っていたからだ。
「どんな人が来るのかなあ、楽しみだよね、千早ちゃん!」
近くにいた千早へ春香は同意を求めて語りかける。
「そうね……」
千早は春香に控えめな同意を示すと、イヤホンを耳に挿して、音楽の世界へ入り込んでいった。
季節は秋だが、春香の心中は春のように穏やかだった。
模型店のショーケースには、力作と呼んで差し支えないガンプラが幾つか飾られている。
少女――のように見える幼い顔立ちをした女性は足を止め、しばらくその作品達に見入っていた。
女性、原田美世は格好良い車やバイクが昔から好きだった事もあって、ガンプラに順応するのも早かった。
だが、動機としてはガンプラ・アルティメイトの決着を間近で見た感動が何よりも大きい。
机の上に飾れるようなプラモデルに込められた情熱は、車を弄るのとどこか似通った物があると美世は考えている。
黒立ち上げと呼ばれる手法で塗装されたユニコーンモードのHGUCユニコーンガンダムを見て、美世は突如として閃く。
(そうだ、あたしもグラデーションに挑戦してみよっかな……その為にもアイドル頑張らないと)
エアブラシを利用した塗装には、結構な額の初期投資が必要だ。
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