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そして、アイドルだがまだデビュー前の候補生に過ぎない美世は、中々購入に踏み切れなかったのだ。
「あ、遅刻しちゃうかも」
美世はアイドル、という言葉から思い出したように携帯電話の画面を開き、時間を確認する。
走れば、まだ間に合いそうな時間だった。
「んー……ハニーとあずさがいないと退屈なの」
「俺に文句を言われてもな……」
「だって鹿島さんはハニーに似てるんだもん」
美希はオフィスのソファーに寝転び、素組みしただけのHGダブルオークアンタを弄り回しながら、近くに座っている青年に不満を吐露した。
美希が言うように、青年――新任プロデューサーの鹿島悠志は、冬夜と似た雰囲気がある。
ただ、冬夜と違って寡黙というよりは冷静だがやや饒舌といったところだ。
「ねえねえ、鹿島さんのガンプラ見せて欲しいの」
「今は写真しかないが、良いか?」
「構わないの」
美希にせがまれ、悠志は渋々といった具合で、携帯の画像フォルダを開く。
そこには、灰と青のツートンカラーが目を引く、ビギニングDの改造機が写っていた。
「ビギニングブルーといったところだな……ブラスト、でも良いか」
「何だか強そうなの、帰りにミキのフルセイバーと戦ってみない?」
先程とは打って変わって、目をキラキラと輝かせながら美希は悠志に迫る。
悠志は助けを求めるように近くにいた青年――春香のプロデューサー、高橋啓介にアイコンタクトを図るが、彼は無関心に書類を片付けているだけだった。
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