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「考えておく」
お茶を濁す為の答えを返し、悠志は席を立った。
チーフプロデューサーである森次冬夜とは二、三度会った事があるが、悠志は彼に通じる部分があるとは思わない。
寧ろ、その事で美希に自分と冬夜を同一視されているのなら、あまり良い気分ではなかった。
「鹿島さん、怒ってたのかな」
悠志がいなくなったソファーで寝返りを打ちながら、美希は彼と入れ違いでやって来た伊織に問い掛ける。
「あのねぇ……アイツも良い気分しないでしょ、チーフに似てる人、みたいに扱われても」
まだ入社したばっかで気が立ってる部分もありそうだしね、と伊織は美希に諭し、手にしていたオレンジジュースのプルタブを開く。
そして、幾度か喉を鳴らすと満足げに微笑んだ。
「そっか、後でごめんなさいしないといけないの」
「アンタでも成長するのね」
「……でこちゃんは意地悪なの」
冗談混じりに苦笑する伊織と、不満げに頬を膨らませる美希。
その様子はどこか、姉妹のようにも見えて微笑ましいものだった。
「ガンプラか?」
「そうそう、それ」
顔立ちも均整な小柄な少女と、チェシャ猫のように微笑む女性が肩を並べて――はいないが、隣合って歩いている絵面は、通行人の目を引いている。
年齢も遠いこの二人に接点があるとすれば、家が近い事と、少女がアイドル候補生で女性がプロデューサーだといったところか。
「マジンガーとかそういうのには興味あるけど、アタシはガンプラはあまり知らないぞ」
「だろうね、まあ知っといて損する物でもないし、今はディケイドみたいな漫画もやってるよ?」
ディケイド、という単語に少女はぴくりと肩を震わせる。
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