16人が本棚に入れています
本棚に追加
「もう……仕方ないですね」
「自分で手を動かさないと、模型作ってる意味がないからな」
ガンプラ・バトルがゲームとして広まっている以上、やはりプロや実力のあるモデラーに制作代行を頼んで対戦ツールとして楽しむ人間も増えた。
だが、模型はあくまでも自分の手で作り上げる物だ。
あくまでも自分が作ったガンプラが動かせる事が、ガンプラ・バトルの魅力であり、バトル自体はその延長線上に過ぎないのである。
「えと、鹿島さんで良いかな?呼び方って。それとも、プロデューサーって呼んだ方が良い?」
悠志と対面している美世はまだ緊張が伺える声音で、彼へ問い掛ける。
悠志は怒っているようにも見える程気難しい表情をしているが、実際は美世の翡翠色の瞳に見惚れていただけだ。
「そうだな……ああ、原田さんの好きにしてくれ」
「じゃあ、間を取って鹿島プロデューサーでっ」
プロフィールを読むと、美世は20歳との事だったが、言動の若々しさや顔立ちの幼さが相まって、まだ16歳かそこらに見える。
「そうか、解った。趣味の欄にクルマ・バイクいじりと、後は模型作りとあるが……」
悠志はプロフィールを手にして、美世に確認する目的で聞いたが、彼女は表情を僅かに曇らせ、困ったような笑みを浮かべて悠志へ返す。
「あたしって、女の子っぽく見えない?クルマとかバイクとかガンプラとか男っぽい趣味だけど、本当は普通の女の子なんだよ?」
美世は同性の友人が少ない。
それは趣味が趣味だからというのもあれば、同世代の女子達がファッションやアイドルを追い掛ける間に美世はカーレースやそういった類の物を追い掛けていた為、根本的に話題が合わなかったというのが大きい。
最初のコメントを投稿しよう!