process.1 「新しい出会いと」

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「引き分けかよ」 「何だ、惜しいな」 「まあ仕方ないだろ、あれだけの戦いを見れただけでも儲けもんだ」 ギャラリーが口々に期待外れな結果を嘆き、或は両者の健闘を讃えている中で、悠志は一人だけ様子が違う人間を見付けた。 その男は不気味に半笑いを浮かべ、まるで値踏みをするかのような視線をライブモニターに向けている。 おかしい、と言うつもりはないが、何かを探っているようにも見える事で、悠志のお節介な性分は「奴を探れ」と彼へ訴えていたのだ。 と、その時。その男と悠志の視線が合った。 相変わらずの半笑いだったが、眉が引き攣っている。男は僅かに驚いているようだ。 しかし、男はそのまま何も無かったかのように立ち去っていく。 (知り合い、ではなさそうだな) どこか不穏な物を感じながらも、悠志も何事も無かったかのように筺体に近付く。 「あ、鹿島さんなの!」 明るく、甘ったるい声が、悠志を呼び止めた。 フルセイバーという機体から想像こそしていたが、まさか現実になるとは。 「美希か、そんな気はしていたが……」 「おお、誰かと思えば鹿島君じゃないか」 どうやら知り合いは一人だけでは無かったようだ。 もう一方の筺体から出てきた筋肉質で健康的な青年……高峰宗一は、悠志の先輩に当たるプロデューサーだ。 「高峰先輩……と、いう事は千早も?」 「いや、千早は先に帰ったよ。鹿島君がいないから俺が美希に練習相手をせがまれてね」 こっちも良い練習になったよ、と言いながら宗一は豪快に笑う。
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