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「パワー負け!?そんな……」
完成度では昴のガンプラの方が、響を遥かに上回っているはずだ。
だが、思い当たる節があるとすれば一つ。
(兄さん……!)
マスターガンダムの右手は、僅かにダメージを受けていたのだ。
宙域に浮かぶ、赤いクロスボーンガンダムを一瞥する昴の瞳には、悔しさと懐かしさが同居していた。
「……ずるいよ……」
結局最後に勝つのは、兄さんなんだ。
機体が撃破され、ログアウトするて同時に、昴は脱力感に苛まれる。
負けたのは、腕にダメージを負っていたからではない。結局、響の熱意に押し切られてしまったからだ。
自分で作り上げたガンプラと、何よりも仲間を信じる熱意に。
「……後で、一緒にお話しましょ?」
白銀の巨体と、トリコロールカラーの小柄な機体……二つの機体が残骸となり、仮想の宇宙空間を漂っている。
二つの機体はそれぞれタイタニアとガンダムF91だが、元の姿からは掛け離れ、ボロボロの姿である。
撃墜判定が下るぎりぎりで行動不能に陥ったままこうなっているのだ。
それはF91の付近を漂うV2アサルトバスターもまた、同様であった。
「……っく、ぐすっ……えくっ……」
タイタニアを駆っていた少女、星野美海は溢れる涙を抑え切れず、泣きじゃくっている。
負けた事が悔しいのもあれば、相手が初めて自分に対して優しくしてくれた嬉しさもあった。
F91を駆っていた女性……三浦あずさは穏やかな笑みを浮かべ、美海を肯定する。
「私、不器用だから……美海ちゃんが色々教えてくれると嬉しいわ、ふふっ」
「そこまでスクラッチ出来るなんて本当に尊敬するわ……」
V2アサルトバスターを駆る女性、音無小鳥もあずさに同意する。
V2のアサルトパーツはガレージキット以外では発売されていない為、小鳥がスクラッチした物だが、美海のタイタニアはジ・Oをゲージに殆ど全身を改修してスクラッチした物だ。
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