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「ほら、煉、早く!次はバスに乗るんでしょ」
「う、うん……?」
(何か良いことでもあったのかなぁ?)
あれほど乗り気では無かったはずの美歩が、僕以上にテンションを上げ声を張り上げていた。
(まあ、ごねられるよりかはマシかぁ……)
美歩のテンションに付いて行けない僕は、駅を出て迎えのバスを探し唖然と口を開いた。
「もしかして……あのバスに乗るの?」
送られて来た封書のように真っ黒な車体に、銀色の文字で【ソロモン】とだけ書かれたバスを、僕は駅の出入口の真ん前に見た。
「わっ!なんだか……火葬場に行くバスみたいね」
美歩の何気ない言葉は、バスに乗り込もうとしていた人々の足を止めてしまった。
「ほんとだ……言われて見れば火葬場に行くバスみたいに、陰気に見えますよね」
(えっ!誰?)
あの美歩の突拍子のない意見に、賛同する輩がいたとは……。
僕は、興味深げに声がした方を振り向いてみた。
「えっ?」
そこには予想に反し、少し冷たい印象を持つ綺麗な少女が、見た目に野暮ったい青年と、並んで順番を待っていた。
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