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「ふーん、やっぱり若い方がいいんだ」
通路を挟んだ隣の席に座った少女から、僕の視線を遮るように顔を突き出し振り向いた美歩に、僕は慌ててまた窓を向く。
「ち、違うよ。聞いたことがある声だなぁって……思っただけだよ」
「ふーん、美人だもんね」
美歩は僕のことを疑いの眼で見ていたが、僕の勘違いでなければ、つい最近とこかで聞いたようなような……。
気になった僕は、美歩の目を盗んで少女を横目で見てみた。
(確か、何処かで……あっ!)
そんな僕を不審に思ったのか、少女の隣に座っていた、いかにも真面目そうな青年が、鋭い眼光を飛ばして来た。
(ヤバい、警戒されたかな?)
僕は空かさず視線を外し俯いた。
「なに、また見てたの!……うわっ!なにあの人?気持ち悪い」
少女を振り向いた美歩は、見たまんまのセリフを口にしだした。
「シッ!美歩、聞こえるよ」
僕は美歩の破天荒過ぎる行動に、慌てて腕を引いたのだが……。
「プッ!だって……あれでリュックを背負ったら」
青年が憎悪に満ちた目で、僕たちを睨み付けていることを、美
歩は知らなかったようだ。
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