76人が本棚に入れています
本棚に追加
バスは市街地を離れ、更に雪深い山道を十分ほど走っていた。
見渡す限り雪に覆われた真っ白い景色……ゲームへの期待が高まるなか、正直うんざりしていた。
バスに乗り込んだ乗客も、ただ静かに到着を待つばかりで、本当にザバイバルゲームへの会場を目指しているのかと不安になり始めていた。
「ご乗車ありがとうございました。当車はまもなくクレニックへと到着致します。どなた様も……」
僕の不安は見事に肩透かしを食らい、僕たちの期待を乗せたバスは、最終目的地である『クレニック』へ到着したのだった。
「うわぁー!広いね」
背後を高い山で囲まれ、雪に化粧を施されたクレニックは、想像していた数倍は大きな施設であり、美歩は歓喜の声を上げた。
「これ、東京ドーム何個分なんだろう?」
「さあ?広すぎて分かんないよ」
首を傾げながら見上げる美歩の疑問に、同じくクレニックを見上げ困惑する僕。
──その時だった。苦笑しか出来ない僕の背後から、怪しげな色気を持つ男性が話し掛けて来た。
「東京ドーム三個分らしいですよ」
突然声を掛けられ、驚きを隠せなかった僕は、その男性を慌てて振り返った。
.
最初のコメントを投稿しよう!