第二章・天国と地獄

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「そ、そうなんですか」 上ずった声で返事を返すと、僕はまた視線をクレニックに戻す。 しかし、僕以上に驚きを隠せなかったのは、美歩の方だった。 「なっ、どうして……!」 「よう、久しぶりだな」 男は屈託のない笑顔を美歩に見せ、懐かしそうに声を掛けて来ていた。 「れ、煉、あっちに行ってみようよ」 そう話し掛けられたにも関わらず、美歩は強引に僕の腕を掴むと有無を言わさず引き摺り出した。 「み、美歩……ちょっと待ってよ!!」 訳も分からず引き摺られて行く僕の目は、すぐ後に現れた知的な美人を捕えていた。 「もう、可愛い娘を見たらすぐにちょっかいを出すんだから」 知的な女性は、ナンパ男を見付けるなり呆れたように顔を曇らせていた。 「ねえ、美歩……知り合いじゃなかったの?」 腕を捕まれたまま、ぎこちなく歩く僕は、不自然な態度を取る美歩に問い掛けてみた。 「し、知らない人よ!誰かと、間違ってるんじゃないの。気持ち悪い!」 (知らない人?そうは見えなかったけどなぁ……) 僕の腕を離し、一人先へ歩き出した美歩から微かに声が洩れ聞こえた気がした。 .
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