第二章・天国と地獄

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『どうして今頃になって現れるのよ』──と。 「ちょっと美歩!何処まで行くつもりだよ!」 「何処でもいいでしょ!」 何をヤケになっているのか分からない美歩は、怒りに任せ歩いているようにしか見えなかった。 「美歩!」 仕方なく僕は、美歩の後を追い掛け腕を掴んだ。 「……迷子になると困るから」 「えっ?」 その言葉に突然立ち止まった美歩は、不安そうに僕を振り返り上目遣いで少し見上げる。 「もしかして……迷子になったの?」 いくら破天荒な美歩でも、見知らぬ土地での迷子は、さすがに怖いようで……。 「まだなってないよ。このまま引き返せばね」 「……うん」 美歩は自分の取った行動を恥じたのか、素直に頷くと僕に手を差し出して来たのだった。 「ごめんね」 そう、謝る美歩が苛立っていたのは、明らかに今さっきの男性のせいだと言うことは分かっていた。 ……気にならない訳では無い。 けど……それでも僕には美歩しかいないから……。 握りしめた美歩の手は、冷たく小刻みに震えていた。 .
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