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「寒いの?」
舞い落ちる雪のなか、無言で首を横に振る美歩の手を、僕はポケットの中へ仕舞い込み歩き出した。
「あっ!こんな所に……」
バスに同乗していた従業員は、無断でいなくなった僕たちを捜していたらしく、焦ったように駆け寄って来た。
「済みませんでした」
今日、何回目の謝罪なのだろうか?僕は従業員に心配を掛けてしまったことを謝った。
「いえいえ、物珍しさから迷子になる方は、大勢いらっしゃいますから」
(えっ!?やっぱり迷子になっていたの?)
突然不安になった僕の内心も知らず、従業員は慣れた雰囲気で歩き出す。
「さあ、こちらへどうぞ」
従業員に急かされるまま、巨大な鉄製の門の前に集められた参加者たちは、招待状と引き換えに金色のコインを手渡され、門を潜ることを許された。
「ご武運をお祈りしております」
従業員は、ゆっくりと門を閉じ、外から巨大な金色の鍵を掛けると、不気味に笑った────ように見えた。
その顔が悪魔のように見えたのは、僕だけなのだろうか……?
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