第一章・終わりの始まり

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「……行くかどうかはわかんないわよ?」 「──うん!」 それでも可能性が見えた気がした僕は、嬉しくなって大きく頷いた……。 「来てくれるって、信じてたよ」 参加を渋っていた美歩は、ブラックジーンズに薄手の赤いダウンジャケットと、色気に欠ける服装で大きな荷物を抱えプラットホームに現れた。 「だって……あんな嬉しそうな煉の顔を見たら断れないじゃない」 「うん。だって美歩は優しいから、きっと来てくれるって思ったから……ありがとう」 僕の意見が初めて通った記念すべき日は、昨日から降り続く大雪のせいで、運転を見合わせる危機と隣り合わせの災厄日。 「……で、家の人には何て言って来たの?」 まさか僕と旅行へ出掛けるとは、言えないだろうから……。 「うん。煉と旅行へ行くなんて言えないしね、真奈美の家に泊りに行くって言っておいたわ」 「真奈美って……確か高校生の時の親友で、親の都合で長野県に転校したって言ってた」 「うん。突然だったんだけどね。ちょうど行き先も長野県だし、あながち嘘じゃないでしょ」 そう笑う美歩に、それが本当の目的なのではと、僕は笑えなかった。 .
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