第一章・終わりの始まり

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「ねえ、それより本当に旅費を出してもらってもいいの?」 (そうなんだよな、ふたりっきりなんだよな) 「ねえ、人の話を聞いてる?」 「んっ?えっ!?」 僕は、美歩の話をあらぬ想像……いや、絵空事のようにしか聞いておらず、美歩のトーンダウンした声に慌てて振り向いた。 「もういい!」 美歩は、白けたように僕から顔を背けてしまった。 「ちょっと待って!言い掛けたんなら言ってよ」 (ちょっと待ってよ、そんなに重要な話だったの?) むくれたまま滑り込んで来た電車の座席に腰掛ける美歩に、僕は焦りと戸惑いを隠せず追い掛けた。 「み、美歩……」 「一時間半だっけ?」 「えっ!一時間半?」 (マズい!) 僕は不覚にも美歩の話に、ついていけなかった。 「長野までは一時間半なんでしょ!」 「あ、ああ。そうだよ。よく知ってたね」 (ふう……どうして僕が美歩の言葉に、こんなにも一喜一憂しなきゃ、いけないんだよ!) 僕は、この先を考えると、憂鬱になりつつあった。 .
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