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「ねえ、それより本当に旅費を出してもらってもいいの?」
(そうなんだよな、ふたりっきりなんだよな)
「ねえ、人の話を聞いてる?」
「んっ?えっ!?」
僕は、美歩の話をあらぬ想像……いや、絵空事のようにしか聞いておらず、美歩のトーンダウンした声に慌てて振り向いた。
「もういい!」
美歩は、白けたように僕から顔を背けてしまった。
「ちょっと待って!言い掛けたんなら言ってよ」
(ちょっと待ってよ、そんなに重要な話だったの?)
むくれたまま滑り込んで来た電車の座席に腰掛ける美歩に、僕は焦りと戸惑いを隠せず追い掛けた。
「み、美歩……」
「一時間半だっけ?」
「えっ!一時間半?」
(マズい!)
僕は不覚にも美歩の話に、ついていけなかった。
「長野までは一時間半なんでしょ!」
「あ、ああ。そうだよ。よく知ってたね」
(ふう……どうして僕が美歩の言葉に、こんなにも一喜一憂しなきゃ、いけないんだよ!)
僕は、この先を考えると、憂鬱になりつつあった。
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