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「あに様物知りですぅ!」
レイリが俺を尊敬の眼差しで見てくる。
悪い気分ではないね。
「セイム。朝ご飯食べましょ。まだみんな食ってないのよ」
「何で食ってなかったの?」
「それはセイムのせいでしょ……」
あ、そっか……俺が失踪まがいの事をしたからか。
「そうだな。私も早く食べたかったのだ」
いつの間にか現れた父さんも、母さんの横で頷いて言った。
「わたしもくうぅ~」
レイリは右手を高らかと挙げて言った。
「じゃあ、みんな食べるわね。ちょっと用意してくるから待ってて……」
と言って母さんは台所に消えていった。
いつ見ても賑やかな家族だと思う。
いつまでも……こんな平和な日々が続くといいなぁ……。
ドンドンドンッ!
玄関から扉を叩く音が聞こえてきた。
ヤベ、フラグ立てちまったかも……。
「む、こんな時間に客か……。失礼だな……」
そう言いながらも玄関に向かう父さん。
このフラグは……家族と別れないといけないかもな……。
ガチャ!!
「誰だ! こんな時間に──」
グサッ!!
俺は父さんの背中から、細い銀色の物が貫いていたのを見た。
「……ごふぅ! ……お主は……いったい……」
「ああ。申し遅れましたね。私は魔王直属の暗殺部隊の隊長、ハスラと申します」
魔王直属の暗殺部隊……ね。
大方、この世界の魔王は平和ボケしているこの家から潰していこうと思ったんだろうな。
「魔王直属の暗殺部隊……だと! ……くっ! セイム! 逃げろ!」
父さんは息絶え絶えになりながらも、息子である俺に逃げるように言った。
今まで……熱血漢のクソ親父と思ってたけど……見直したぜ。
「父さん。俺は逃げないよ。目の前の人を守れなくて、この後悔やんだりしたら嫌だしね」
「今は……子供を……最優先で……逃がすべきなんだ……!」
「それは間違ってるよ。逃がすのは"女性だけ"でいいんだよ」
「だが、お前にはコイツを──」
「──倒せないって言うのか? 父さん……。父さんには僕の本気を見せてあげるよ!」
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