空白の五年間は気にしないで下さい。

13/14
47394人が本棚に入れています
本棚に追加
/641ページ
「……お前の死因はこの家から落とそうっていう甘い考えのせいだ。まぁ、俺が居なければ勝てたかも──って、もう聞こえてないか」 ハスラはもう全身干からびて、見るも耐えない姿になっていた。 俺は剣を亜空間にしまい、父さんの方に歩いていった。 「く、来るな……!」 「? どうして?」 「お前……みたいな"化け物"……俺は……知らない……ぞ!」 "化け物"……ね。 確かに的を射てるかもしれないな。 人類でも最強クラスの実力を持つ、雷帝である父さんを倒したハスラを俺が一瞬で倒したんだからな。 つまり……5歳児にして、もう人の域をとっくに超えてるわけだからな……。 「大丈夫だよ。俺は今日でこの家を出てくから」 「何だと……?」 「俺が"力"を見せれば、この家に拒絶される事なんて知っていた。今から、父さんの傷を治した後、記憶を消させてもらうよ」 「お前は……それで……いい、のか?」 「うん。一年毎……そうだね、レイリの誕生日にはプレゼントを置きに来ますよ。それに……色んな国に行ってみたいしね。……『ヒール』」 俺は父さんに手をかざして魔法を唱える。 すると、みるみる傷が癒えてくではありませんか。 「ふぅ……これでもう立てるでしょう?」 「あ、ああ……」 父さんはまだ体が動かしにくいらしく、まだ動作がぎこちない。 「まぁ……さっきは消すと言いましたが、そんな事はしません。俺が父さん達にやるのは『記憶封印』だ」 「『記憶封印』……?」 「そう。『記憶封印』は、俺がある条件を設けて局所的な記憶を封印する。封印されてる間はその記憶は思い出せない。しかし、封印する時に設けた条件をクリアすればその封印は解ける。今から俺が設ける条件は……『今から10年後』だ」 「10年後……か」 「ああ。10年経つと俺の記憶が蘇る」 つまり……俺が15歳になった時だな。 「もう……お別れの時間だ。じゃあな……『記憶封印』」 俺の手を父さんの頭の上にかざすと、俺の手から淡い光が出てその光がなくなると父さんは倒れた。 さて……次は母さん達かな。
/641ページ

最初のコメントを投稿しよう!