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俺は父さんの眠っている玄関から、母さん達のいる寝室まで来た。
「母さん。終わったよ」
「セイム! 無事だったのね! 良かった……。本当に良かった……」
俺は母さんに強く抱きしめられていた。
この温もりも……これからはお別れだな。
「そういえば……レオンは? まさか……!」
「いや。激しい闘いだったから気絶して眠ってるよ」
本当は俺が眠らしたんだけどな。
「あに様。何かあったんですか?」
レイリが涙目で俺に訊いてきた。
お母さんにも同じことを何回も言ったんだろな……。
仕方ないな……。ちょっとだけ本当の事を言ってやるか。……ちょっとだけ冗談を混ぜて。
「実はね……悪い人が襲ってきたんだ」
「悪い人?」
「そう。レイリなんかじゃあガブリッ、と食われちゃうぞ~」
「ひぃん!? 恐いのは嫌いですぅ~……」
「ハハハ。でも悪い奴は俺が倒したから大丈夫だよ。……だから、安心して───おやすみ。『記憶封印』」
俺はレイリの頭に手をかざす。
すると、レイリはいきなり倒れてしまった。
「セイム!? 貴方何してるの!?」
「ちょっとだけ記憶を封印しただけさ」
「記憶を……封印? どうしてそんな事を……?」
う~ん。説明するの面倒だな~……。
「それは……10年後に父さんに訊いてくれ。それじゃ──」
「──待って!!」
俺が記憶を封印しようとすると止められた。
「まだ……何か言うことあるの?」
「ええ。一つだけ貴方に問いたい事があるの……。
──貴方はこの家族を愛してる?」
愚問だね……。そんなの──
「──愛してるさ。自分でもバカだと思うくらいに……」
そう言った時、俺の目から涙が一滴落ちた。
何で自分が涙を出したのかわからない。
悲しいのか、または嬉しいのか、俺の感情の筈なのにまったくわからない。
でもただ一つ言えるのが──
「──また会おうな。母さん、さようなら。『記憶封印』」
すると、母さんは笑いながら眠ってしまった。
「ヒグッ……エグッ……」
今わかった自分の感情は……
……とても悲しくて堪らなかった。
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