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今、見渡すかぎりの闇が自分を包んでいる。
まるで、どっかの漫画の主人公が自分の世界に入って、もう一人の自分と対話し、新しい必殺技を獲得する。そんな感じのシーンがモノトーンで闇の中を流れていく。
しかし、それは広大な闇の中に主人公がいる事で成り立つのであって、今はそんな主人公はいない。
ただ一つだけ主人公らしいのがいるとするならば、小学生くらいの低身長の少女にジャーマンスープレックスをかけられている男が一人いるだけだ。
男は、口から泡を吐き、地面にたたき付けられた頭は変な角度に折れ曲がっている。そして、小刻みに体をピクピクと痙攣させている。
「ふんっ…ふん…ふん」
技をかけている少女は、荒い鼻息で獲物を捕らえたような鋭い目つき男に向けている。そして、か細いその腕をゆっくりと腰元から外すと、ぐったりと倒れる男の腰に蹴りをかました。
少女は、一仕事終わったような朗らかな笑顔を作ると、腕で自分のデコの汗を拭う。
「ゴミの清掃おーわり☆」
ゴミ…自然にたまった汚い物を意味するが、多分この半ば死にかけてる男の事を指す代名詞であろう。
誠に残念だが、ゴミと言われるこの男こそが主人公のポジションに当たる人間である。
男は未だにぐったりとしているので話を役数時間前に戻そう。
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