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『おい、●●。失敗って何だと思う』
「………」
『母さん、●●が反抗期だ!』
『あら、じゃあお赤飯を炊かないと』
「質問の意味がわかりかねるんだけど父さん?」
『そんな難しい話じゃないぞ●●』
「失敗は失敗でしょ」
『それじゃあ話が進まないよ』
『私はね失敗とはこの世には存在しないと思うんだよ』
「要するに失敗は成功の母ってこと?」
『いや、そんなポジティブな話じゃないんだよ』
『そもそも失敗とは成功の対義語だろ。つまりは成功するはずのことが成功しなかったときに人はそれを失敗と称するはずだ。』
『ここでもう一歩踏み込んで考えてみようか。成功するはずのこと当然成功するはずだろう』
「うん」
『失敗なんてするわけないそれは成功するはずのことなのだから』
『成功には理由がなくて、失敗には理由があるなんて言うけれどこの言葉には個人的には大いに異を唱えたいむしろ逆だ』
「逆?」
『ああ全くもって逆だ。成功には理由があって、その理由が欠けているからこそ人は失敗するのだと私は訂正したい。つまりは失敗することは最初から失敗することが運命づけられているし、そしてだからこそ、それは失敗ではない』
「でもそれでもうまくいかないことなんて世の中には溢れているよ」
『違うよ』
『うまくいかないこと、
望みが叶わないこと、
思い通りにならないこと、
それは最初からうまくいかないはずのことだった。
だからこそその結果は極めて順当であり、有り体言えばそれは成功以外の何物でもないのだよ。ひねくれた言い方をするなら失敗することに成功しただけだよ』
『故に●●。もしも失敗したと嘆いている可哀想な人がいたら、その人の肩に優しく手を置いて、そっと囁いてあげなさい』
「………」
『大丈夫だよ。その失敗が君程度にとっての成功なんだよ。ってね』
「…父さんっていい性格してるよね」
『母さんやっぱり●●が反抗期に入ったよ』
●●●の思い出
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