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――――――・・・『朧月』
「ネーミングは?」
タカヒロの問いに、担当者は三味線の奏者を指差す。
「甘いマスクに甘い声、歌唱力の高さに難易度高い演奏、更には全員のプロフも私生活も謎じゃ僕らヤバいんじゃないんですか?」
珍しく弱気なアツシ。
「僕らは僕ら、彼らは彼らだよ。」
そう宥(なだ)めるマキダイ。
「ここ迄凄いのに、路線はバラードだけ。彼らは謎で。バンド名も『朧月』で、まさに霧がかかった謎めいた月。」
タカヒロは呟(つぶや)く。
「・・・バンドも本業の合間に、やってるようです。」
担当者の呟きに、
「マジ?本業持ち?バンドは遊びなの?本気なの?」
マキダイは冷たく言い放つ。
その時、スタジオのドアが開かれた。
「覗きは契約違反な気がする~。僕らは練習中ですから、外野は静粛(せいしゅく)に。後は、担当者さ~ん。来るの遅すぎ~。僕ら練習終わったら本業に戻りますから。」
ドアを閉める直前、ドアの縁(ふち)を掴み閉めるのを妨害する人が。
「・・・何でしょうか?社長さん」
彼の挑発めいた言葉に、
「練習曲がバラード以外でも、バラード路線でも構わない。だが、本業持ちってのは気に食わない。本業を辞めるか、バンド辞めるか、どちらかを決めてくれないか?」
ヒロの静かな怒りに、場が一気に氷点下に。
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