引き抜き

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  「音楽楽しめるんなら、何処でも構わないってのが僕らのスタイルなんですよ~、社長さ~ん。」  彼の言葉に、更に極寒(ごっかん)に。  ぶちギレ寸前のタカヒロとマキダイを担当者とアツシが止める中、静かな怒りを秘めたヒロと不敵な笑みを浮かべる彼は睨み合いを続ける。 「・・・俺らにとって音楽は、人に力を与えるもので、幸せにさせる力だと思ってる。確かに貴方達は音楽を楽しみたいだろうが、LDHに入ったからには楽しのは勿論(もちろん)提供者側として音楽を聴いてくれる人に夢や幸せや希望を与えなければならない。みんな、本気で全力を注いでいるんだ。遊びなら、出てってくれ。」  ヒロの怒りを込めた言葉に、彼は俯(うつむ)いたまま。  いや、肩が震(ふる)えている。  そして、爆笑。  唖然とする他の5人。 「・・・本音。その本音が聞きたかったんだよ~。」  彼は腹を抱えながら言う。 「改めまして。御挨拶遅れました。私(わたくし)『a Hazy Moon』通称『ハム』のヴォーカルを担当致してます、草一郎です。そして、今は三味線持ってますがベース担当の桔梗、ドラム担当の咲弥、ギター担当の空蝉です。以後お見知り置きを。」  優雅に一礼するハムメンバーに、5人は、ただただ、唖然としていた。  
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