気づき

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 毎日を暮らしている私。  いつしかそれは、暮らしでは なく、単に過ごすだけの毎日に なっていた。  生活の為の仕事だった筈が、 今や、仕事の為に毎日の生活が あるようなものだ。  『私は一体何をしているのだ ろう』……そんな思いに苛まれ ながら毎日布団を被って眠り、 翌日の目覚まし時計が私に朝を 告げていた。  気が付けば47歳になっていた。  仕事はそつなくこなす……と 言うよりも、人一倍成果を上げ ている。それが寧ろ災いした。  上昇志向の強いやり手連中と いう者は、自分の出世に邪魔な 存在を潰そうとするのが世の常 である。  罠に嵌められ閑職に追いやら れた中年社員ほど惨めなものは ない。  絶望が私の未来を閉ざした。  家族もおらず、一人暮らしで ある事だけが、せめてもの救い だった。 そんな或る日の事だった。 .
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