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新しい小さな発見が、次々と
私を襲う。こうして歩いてみる
と、まるで知らない町にいる様
だ。今まで、気付かなかった事
ばかりであった。
少し歩いた所で、妙な風景に出くわした。
「あれ?こんな通りがあった
かな?」
少し奥まってはいるが、そこ
にはちゃんとした商店街の入口
があった。
「おいおい、こんな商店街に
オレは気付いていなかったのか
……何てこった」
この道を毎日出勤する自分の
顔が、まるで生気のない、目を
開いたデスマスクの如くに浮か
んで来た。
「オレは何をする為に、毎日
この道を通っていたんだ」
改めて自分の人生に失望してしまう。
商店街の入口にはアーチ型の
看板が掛かっている。
看板の形に沿って、弓なりに
大きく《いらっしゃいませ》と
書かれたその下に、その通りの
名前があった。
「思い出ロード?ありがちな
ネーミングだが、少し古くさい
センスだな」
ちょっと鼻で笑っては見たがどこか安心感がある。
私はその商店街に、何の気もなしに吸い込まれていった。
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