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不思議な光をぼんやりと見つめていた。
太陽の光とは違う、紫色の光。
見つめていると、吸い込まれそうな程魅了され、ヨロヨロしながら近づいていった。
光の元は、小さな石だった。泥に埋もれ、自分と同じように雨に打たれている。だが、自分はここにいる、と主張するかのように輝いていた。
思わず石を手にとった。スベスベとした感触で、半透明な紫色をしていた。石を握る手が、不思議とじんわり温かかった。
光をじっと見つめていると、何か語りかけてきた。
(可哀想に)
ビクッと身体が反応した。
(こんな世界、嫌いだろ?)
無意識に頷いた。
(世界が憎いか?)
まるで自分の心を詠んで賛同するように語りかけてくる。
(世界を…お前の世界にしないか?)
降りしきる雨の中、虚ろな目で頷いた。そしてその瞬間…
目の前でどす黒い光が勢いよく溢れ出した。景色を黒く塗り潰すように。
石を握る手が冷たく、次第に感覚が薄れ…意識を失った。
…紫色の石が笑ったような気がした。
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