花魁の月黄泉

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「月黄泉!」 お向かいに住む池田屋の息子が名付け親だった気がする。 「つきよみ?」 「そう、月黄泉。 お月様にある黄泉の世界に連れて逝かれそうだから。月黄泉。」 そう言って彼は紙に墨で私の名前を書いた。 「なんか、なあ。」 私が納得のいかない顔をすると彼は、笑って私の頬に手を添えてこう言った。 「君は、今も綺麗だけど大きくなったら美しく育つだろうね。」 私が、はぁと気の抜けた返事を返すと彼はまたも笑って言葉を続けた。 「だから、少しでも君に近づいていたかったから少しでも君の中に俺を残して欲しいから。明日から皆の月黄泉になってしまうだろう?」 だから、花魁名をつけたんだ。 と言った。
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