謎多き彼

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確かに私が会った時、彼の笑顔は大体がにやりとしたものだったけれど。 それでも、彼の口から出てくる言葉は、どれも、冷徹という感じとはかけ離れていた。 「だからさー、くらもっちゃんがもしかして、先輩のこと見てるのかなって思ったとき、珍しいなって。でも知らないっていうから気のせいだったのかなーって考えてた矢先に、さっき話してるんだもん。友達って聞いて二度びっくりよ。」 けらけらと吉井は笑った。 「私もよくわからないけど、、バイト先が一緒だからじゃないのかな。」 考え込みながら、呟く。 「えっ。くらもっちゃん、バイトしてんの?えーどこどこ?行きたい!」 「…いや、こなくていいし、教えない。」 吉井の口がとんがる。 「椎名先輩は、バイト1個じゃないよ。相当入れてるよ。たぶんね。」 「え?でも結構入ってるけど…」 「うーん、じゃ今だけなのかな。部活も才能があるから、目つけられて、嫌がる先輩を、できる時だけでいいからって、無理無理頼まれて渋々入ってたくらいで、ほとんどの時間をバイトに費やしてるって話だよ。」 噂だけど、と付け足す。
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