謎多き彼

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この日は、屋上で先輩には会わなかった。 期待していたわけではなかったけれど、つい踊り場を通り過ぎて、屋上を覗いてしまったのは確かだ。 青空を見ながら、購買で買ったパンをかじって、カフェオレを飲んだ。 椎名先輩がそんなに、有名で優秀だとは知らなかったけれど、なんとなく納得できた。が、彼の事を表す単語の違和感は拭えない。 冷徹人間、鬼、女子を泣かす、笑わない…それから… 何が目的なんだろうって、浅尾が言ってたな。 もしも― もしも、周囲が言うような、私よりも彼を見てきた人たちが言うような人間が、本当の彼なんだとしたら、 月明かりの下の彼は、一体誰だったんだろう。 私の知っている彼は、誰なんだろう。 椎名孝一という私の初めての友人は、何者なんだろう。
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