ほんとの自分

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「いた…」 冬に変わろうとしている風をうらめしく思いながら開け放たれたドアを睨む。 ふと見た先の景色に惹かれ、目が見開かれる。 温かさを犠牲にして、屋上に足をすすめた。 まっすぐ前だけ、フェンス越しに見えるものだけを見つめて。 いつの間にか、雨は止んでいたらしい。 青空が広がっている。 フェンスに手をかけて、吸い付くように、広がるグランドと緑を見て、それから空を見上げた。 屋上からの空は、手が届きそうだった。 つい寝転んでみた。 制服に雨の落し物が少し染みる。 と、その空から上履きが降ってきた。 「………」 ぽたりと音をたてて、それは、大の字になった私の右手の先に着地した。 ついつい目で追ってしまってから、一瞬で理解した。 先客がいたことを。
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