ほんとの自分

9/15

904人が本棚に入れています
本棚に追加
/911ページ
今日は、森も、お気に入りの家も見る余裕なく、一目散に佐伯さんの所に行った。  カランカラン 荒く息をしながら、コーヒーの香りをいっぱいに吸い込み、 「こんにちは」 といえば、佐伯さんが、 「おかえり。学校どうだった?」 と、言う。 いつも通りの声と言葉に、落ち着きを取り戻すと、私もいつも通り、カウンターの裏にある戸棚に鞄を仕舞って、壁に掛けてある黒いポケット付エプロンを体に巻いた。 腰でリボン結びをしながら答える。 「普通でした。いつもと変わらず」 佐伯さんが笑う。 「それにしては、今日はかなり急いできたように見えるけど?まだ始業時間には早いし、それに制服のままだけど。」 あぁ…… 何やってるんだ、私。動揺しすぎ。 恥ずかしさのあまり、唇を噛みながら、時計に目をやると、時刻は16時半だった。1時間も早く来てしまったことになる。 はー、と本日何度目かの溜め息をついた。
/911ページ

最初のコメントを投稿しよう!

904人が本棚に入れています
本棚に追加