焦燥感

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よくわからないが、佐伯さんは椎名先輩のことを気に入っているようだった。 気づかれないように、溜め息をついてから、エプロンを着け、手を洗った。  「おはようございます。」 いつの間にか、すぐ傍まできていた彼は、にやり、と笑って挨拶しながら、空になったカップをカウンターに返した。 その一言で、彼は他でもアルバイトの経験があるのだろうと察することができた。 ここでは、出勤時に『おはようございます』は使わない。 「…どーも」 目を逸らして、無愛想に応えた。 「はい、1番テーブル。」 間に割り込むように、佐伯さんがコーヒーを乗せたトレイを置く。それを奪い取るように掴んで、1番テーブルに運んだ。 その後ろ姿を見ながら、 「孝一くん、随分嫌われてるみたいだね。何かしたの?」 「…何もしてないと思うんですけどね…」 そんな会話がなされていたなんて、知らなかった。
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