焦燥感

10/12

904人が本棚に入れています
本棚に追加
/911ページ
少しの意地悪をのせて、仕返しとばかりに聞いてみる。 目と目がばっちり合う。 「千晶とおんなじ理由だと思うよ。あそこは俺の特等席なんだ。」 先輩はさらりと言い放った。 断りもなしに、千晶と呼び捨てて、聞いたことへの正確な答えはくれない。 「ずるい」 私が無意識に呟くと、先輩は椅子から立ち上がった。 「…あの時、貯水槽のそばに寝転んでて」 こちらへ向かってゆっくり歩きながら、伏し目がちに先輩は話す。 「降りようとしたら、上履きが脱げちゃってさ。そしたら下に千晶がいた。」 そう言って目の前に立つと、先輩はしっかりと私の目を見た。 「千晶のことは、前から知ってたよ。」
/911ページ

最初のコメントを投稿しよう!

904人が本棚に入れています
本棚に追加