904人が本棚に入れています
本棚に追加
/911ページ
ガチャ
「お待たせ…あれ、どうしたの？コーヒー淹れたよ」
唖然とした私を見て、佐伯さんが不思議そうな顔をして首を少し傾げる。
「孝一くん、意地悪したら、もうバイトにいれてあげないよ」
トレイからコーヒーをテーブルにうつしつつ、茶目っ気たっぷりに言う佐伯さん。
「やだなぁ。なにもしてないですって。ちょっと学校の話をしてただけですよ。」
そういうと、先輩は私から離れ、先ほど座っていた椅子に戻った。
正直、その後、その３人で何を食べてどんな話をしたか覚えていない。
ただ、帰り道、２人きりになっても会話らしい会話はしないまま、彼は寄る所があるからと、途中でさよならしてしまって、ひとりで自転車を漕いで帰ってきたのは、記憶にある。
―千晶のことは、前から知ってたよ。
家に入ってからも、その言葉は、私の思考を占領した。
最初のコメントを投稿しよう！