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「あるよ」
静かに、浅尾が答える。
「っ」
廊下に出ようとした私の腕を、彼が掴んだ。
「なぁ、倉本。」
うつむいた私の視界に、浅尾の上履きが見える。
今日はうつむいてばかりの一日だ。
「お前、好きな奴とか、いるの？」
「は？」
思わず顔を見上げてしまった。
近すぎる。
「そいつのこと、見てたんじゃないの？」
そう言われた瞬間、思い切り、腕を振り払って、浅尾のもう片方の手にあった紙の束を強引に掴んだ。
「冗談じゃない。私は誰も好きになんかならないっ、浅尾のばーか」
あっかんべーして全速力で職員室まで走る。
お礼を言うのを忘れた。
結局何の部活かわからなかった。
それよりなにより、浅尾って腹立つ。
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