903人が本棚に入れています
本棚に追加
小さくて暗い森は、周囲の住宅の明かりに包まれるように、そのシルエットを浮かばせて、ひっそりと佇んでいる。
信号が青に変わると、自然と私の足は森の方へと自転車を走らせていた。
―世界には、知らなくていいこともある。同じくらい知っていいこともある。
じゃぁ、私は。
知らなくていいことの方を、きっと先に知ってしまったんだろう。
遠くから見ていただけで、一度も足を踏み入れたことのない土地は、自分が思っていたよりもずっと小さく、そして静かだった。
木々の根たちが太く長く張っているせいで、あちこちの土が盛り上がっていて、自転車で走るのには不向きで。
自転車から降りて、押して歩く。
ちょうど森の中心に当たる部分に、家はあった。
最初のコメントを投稿しよう!