903人が本棚に入れています
本棚に追加
風が、吹いた。
心地良い春風が頬を優しく撫でて、髪を揺らす。
靴を濡らさないように波打ち際を歩きながら、
綺麗な貝殻はないかと、砂浜に目を落とす。
乳白色の、艶やかなそれを見つけて、
夢中で拾おうと屈むと、
「危ない」
ぐいっと繋いだ左手を引っ張られた。
「本当だ。ありがとう」
急に引き返してきた波が、もう少しの所で靴を濡らせたのにと悔しげに去っていく。
最初のコメントを投稿しよう!