風が吹いた

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風が、吹いた。 心地良い春風が頬を優しく撫でて、髪を揺らす。 靴を濡らさないように波打ち際を歩きながら、 綺麗な貝殻はないかと、砂浜に目を落とす。 乳白色の、艶やかなそれを見つけて、 夢中で拾おうと屈むと、 「危ない」 ぐいっと繋いだ左手を引っ張られた。 「本当だ。ありがとう」 急に引き返してきた波が、もう少しの所で靴を濡らせたのにと悔しげに去っていく。
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