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"夢路"Side IN
「気をつけろよ汲さん。
何もかも未知数な人だ……警戒は怠らない方がいいぜ」
「一流さんに言われなくても分かってますよ。
大丈夫です、ケチョンケチョンにしてやりますよ!!」
「汲、頑張ってね……応援してるから!!」
「はい、翔さん!!
勝ってきたら、私とケーキを食べるんですからね!!」
「……うっ、うん。
楽しみにしてるよ」
楸原さんが壇上に上がったのを見て、汲さんも壇上に向かう。
その途中で、一流さんが汲さんに忠告をしているけど、汲さんは楽観的であり翔さんしか目に入ってないみたいです。
私は、楸原さんが今どんな思いで壇上にいるのか分からない。
自分を殺した相手と戦う心情なんて……殺されたら……はい……終わり……それじゃ済まない様な事を楸原さんは体験してきた。
……落ち着いてる様に見えるけど……なんか、不安です。
楸原さん達に寝返った……寝返ったの……かな?
……うん、仲間になったんだから寝返っただ。
寝返ったのは、汲さんや翔さん達が悪いと思ったからじゃない……ほんの少しはありますけど……。
楸原さんと雀宮さんに……"泣いて欲しい"からだ。
誰にも言えない悲しみを一人で抱えて来た……だから、雀宮さんは楸原さんの前で泣いた事はあるかもしれない。
けど、楸原さんはああいう人…………きっと、復讐に関して人前で泣いた事がない気がします。
だから、私は……楸原さんと雀宮さんの……辛さを和らげてあげたいんだと思う。
その為に……今出来る事はなんだろう?
楸原さんが汲さんとの戦いで辛くならない方法は?
「汲さん……」
「あれ、何かな夢路ちゃん?
さっきの事は別に──」
「楸原さんとは……あまり"会話"をしない方がいいと思います」
私は、汲さんを呼び止めて言った。
汲さんは、さっきの事についての事を何か言うと思っていたみたいだけど、私の本心は違う。
雀宮さんは、新さんと会話をする事によってああなっちゃった……だから、私は楸原さんが汲さんの発言でそうならない様……楸原さんが辛くならない様に"会話"をしないで欲しい。
余計な事を言わないで欲しい、そう思って言った言葉だった。
勿論、汲さんの事を心配してでの行動でもある。
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