第一編 重なる運命の歯車Ⅰ

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少年の顔を明るい日差しが横から照り付ける。夜明けと共にようやく温かくなりそうな兆しが見えてきた。 「ここで合ってるんだよな……。」 辺りを見渡す少年。この場所に来てから何度も見渡したが、だからといって何かが分かったワケでもない。 小さなジャングルジムとブランコ、砂場だけしかない、ごく普通の公園だ。 「5時26分……。」 少年の左手首に巻かれた高級感の漂う腕時計が正確に現在の時間を知らせる。 「まだか……? それとも別の北公園があるのか?」 またも辺りを見渡す少年。すると今までに無かった変化が一つだけ確認できた。 道路を挟んだ向かいにある5、6階建てのアパート。その屋上に人影が見えたのだ。 「あんな場所で何をしてるんだ?」 人影は屋上の落下防止フェンスを越えて、足が宙に浮くようにして腰を下ろした。
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