プロローグ

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ある日の放課後。 静まりかえった教室。 教室には、部活動を行う生徒達のかけ声や、音楽、話し声など、様々な音が聞こえてくる。 窓の外に広がる空は、傾き始めた太陽によって橙色に染まり始めていた。 未だに残る空の青と混ざり合ったその色は、とても美しい。 教室に残っている生徒など、普通は殆どいないもので、皆すぐに部活に行くか、帰宅部の人はさっさと帰ってしまう。 いつもなら私は後者なのだけれど、今日は違った。 数学教師に、個別指導を受けていたからだ。 指導が終わって教室に戻って来てみれば、いつもは誰もいない教室に、人影があった。 きっともう誰もいないだろうな、と少し心細かったから、ちょっとだけ安心する。 窓側の席で、誰かが机に突っ伏して眠っている。 窓側の一番の後ろ。誰もが羨む特等席。 その特等席は、今は私の席。 私の席で寝ているのは、どうやら男子のようで。 色素の薄い髪の毛が、太陽の光を反射してキラキラと輝いているように見えた。 ……あの頭には、見覚えがある。 .
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